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ビックリ仰天! 『いんちき寿司大図鑑』ならぬ『日本人が知らない世界のすし』だけど…


日本人が知らない世界のすし (日経プレミアシリーズ)日本人が知らない世界のすし (日経プレミアシリーズ)
(2010/08/10)
著者:福江誠
発行者:羽土力
発行所:日本経済新聞
装幀:ベターデイズ
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執筆依頼を送る寸前まで行っておきながら、結局断念した人が別の出版社から本を出したのを知った時の悔しさは、計り知れないものがあります。福江誠さんの『日本人が知らない世界のすし』は私にとってはそんな一冊です。

異文化交流・カルチャーショックウォッチャーを自認している私としては、今世界中で寿司が流行っている事について、かねてから強い関心を抱いており、いつか『スシ・クール』という本を出したいと思っていました。しかしアメリカや中国など一国に詳しい人はいても、全世界の寿司事情に精通している人が誰だかは容易には分かりません。


ファーストフードマニア

『ファーストフードマニア』の84ページに出てくる「ホールーショウスー」という謎寿司チェーンのデザート型寿司。もはや寿司というより、単なるフルーツ。


そんな中で海外の寿司店で活躍している寿司職人を送り出している、寿司職人養成学校、
東京すしアカデミーの存在を知ります。この学校の方なら世界の寿司事情を俯瞰的に知っているだろうと思い、執筆依頼を送る寸前のところまで行きます。ただ何となく法人組織としてシッカリし過ぎていて、私なんかを相手にしてくれないだろうと思い留まり、いつの間にか諦めていました。それでこの本が新刊で登場した時、「あっ!やられた……。あーあ」と本当に悔しかったです。


ファーストフードマニア


ファーストフードマニア』の84ページに出てくる「ホールーショウスー」という謎寿司チェーンのケーキ型寿司。


冒頭のカラーページにはブラジルのバナナを丸ごと巻き、チョコレートソースを添えたモンキーロールや、ポーランドのキャビアとラズベリーソースがかかっているゴールデンカリフォルニア等、日本人からすると「これは寿司ではない!」と叫びたくなる様な、カラフルで珍奇な寿司がいっぱい載っています。


台湾寿司2

この前の台湾出張で見つけた『ファーストフードマニア』でも出てくる、台北の元気寿司。


ファーストフードマニア〈Vol.1〉中国・台湾・香港編ファーストフードマニア〈Vol.1〉中国・台湾・香港編
(2007/12)
黒川真吾、田村 まどか 他

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ただ私が福江さんの考え方に大変共鳴したのが以下の部分です。

「それは寿司ではない」と思う日本人は少なくないと思う。しかし、振り返ってみれば我々も海外の料理を日本の食文化に取り入れている。例えば、明太子や納豆などで和えたパスタなどイタリア人が見たら、「それはパスタではない」と言っても不思議ではないだろう。これらは、その土地の人々が築き上げた食文化から生まれた「ローカルの寿司」と言うべきものだ。

私自身は、世界に広がったロール寿司や変わり寿司を「エセ」とも「ニセ」とも思わない。これらは現地に根付いたローカル寿司であり、正統派の日本の寿司とは違うものの、世界に広がる寿司の一つだと考えている。



実は『ファーストフードマニア』や『いんちきおもちゃ大図鑑』など海外のパクリネタを誰より愛している私も、この意見に全く同感です。諸外国の寿司をニセモノとバカにする前に、我々日本人自身も諸外国料理を日本人向けに相当アレンジしていて、本国の人達から見たら全くトンデモみたいな料理になってしまっている事を相対的に自覚する必要があるのではないかとよく思います。



いんちきおもちゃ大図鑑―中国・香港・台湾・韓国のアヤシイ玩具いんちきおもちゃ大図鑑―中国・香港・台湾・韓国のアヤシイ玩具
(2009/10)
いんちき番長、加藤 アングラ 他

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和風パスタだけでなく、ライスバーガー、ラーメン、カレー、そして古くはトンカツなどもそれを生み出した国の人達からしたら全く許し難いほど別物になっているはずです。でも日本人はそれを食べている時にニセモノを食べているとは自覚していないはず。むしろ身勝手なことに日本流にアレンジされている方が、本国のものより旨いとか洗練されていると思っている可能性まであります。


台湾寿司3

『ファーストフードマニア』でも出てくる、台北の元気寿司。

また食文化は相互に影響を与えまくっており、例えばアメリカの象徴であるハンバーガーのハンバーグはドイツ移民によってハンブルグからもたらされたと言われています。しかしそれ以前はハンバーグはタルタルステーキと呼ばれ、それはもともと固い馬肉をミンチにして食べていたタタール人がヨーロッパに侵攻した時に広まったものでした。と言った事からも「正統派の料理」という存在が数百年もの間、先祖伝来形を変えずそのまま現在に至っている訳ではないようです。

実は我々が今、寿司だと思っているものも間接的にアメリカの影響を強く受けているみたいです。この本にその経緯が詳しく書いてあるのですが、戦時中、米は配給制で、終戦後もそれは続き、外食産業のほとんどが禁止されます。


日本料理屋


しかしながら、客自らが配給された米一合を寿司屋に持参して、十巻の握り寿司と交換し、店はお客から加工賃を受け取るという「委託加工制度」という形の飲食業だけが、マッカーサー率いるGHQ(連合軍総司令部)によって認められます。これは天ぷらやうなぎ等他の和食や大阪の箱寿司には認められませんでした。

結果的にこの制度から寿司一人前が十巻が標準になったり、もともと40グラムもあった握りがその半分の大きさになるなど、その後の寿司の原型を形作る事となるらしいです。したがって今、我々が純粋に日本の寿司だと思っている「江戸前寿司」も大きくGHQ、つまりアメリカの影響を受けているとの事でした。なるほど。


松戸牛

高雄で出くわした松阪牛ならぬ松戸牛を売りにするお店。

……と海外の寿司をバカにするだけではなく、日本の寿司をグローバルな視点から相対的・客観的に紹介しています。後半では海外で活躍する日本人板前のサクセスストーリーや苦労話が描かれており、同じ日本人として世界の僻地などで孤軍奮闘する寿司職人に思わずエールを送りたくなってしまいました。


ファーストフードマニア

『ファーストフードマニア』の84ページに出てくる「ホールーショウスー」という謎寿司チェーンのいなり寿司の進化バージョン。

またそれぞれの国のお国柄や流通・冷凍・衛生事情なども千差万別で、その国ならではの日本の寿司を再現する難易度の高さなどが伺いしれます。特にハノイの「ザ・スシ・トキョー」を開業した三木淳さんとチリの僻地プエルト・モンに「ヤマト」を開店した西川大輔さんの話が印象深かったです。

またアニメや漫画だけでなく日本料理、寿司を世界に広めていこうという福江さん、そして東京すしアカデミーの姿勢にもどこか共感します。


ファーストフードマニア

『ファーストフードマニア』の84ページに出てくる「ホールーショウスー」という謎寿司チェーンのもはや何と表現していいかよく分からない得体の知れない寿司。煮たエビに生ウズラの卵、そして辛風味の茹でたこがいなり寿司の皮で蒔かれている。

あともう少し知りたいと思ったのが、オーストラリアやスウェーデンなど先進国ではなく、流通業や衛生観念が発達していない、僻地、発展途上国や紛争地帯の寿司屋事情ですね。

敢えて変な場所の寿司屋を探してみたのですが、例えばキュラソーのCraving Sushi、セネガルの首都ダカールのDakar Sushi、アルバ(アルバニアではなくカリブ海のオランダ領の島)のSushi-ya、ブルガリアのWasabiなどのお店に直接インタビューして、どうやって鮮魚を仕入れているのか、どういう寿司を振る舞っているのかそのメニューの写真などを載せて、紹介していたら面白かったかも……。


台湾寿司

高雄で見かけた持ち帰り寿司。ほどんど貝です。

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tag : 日本人が知らない世界のすし 福江誠 東京すしアカデミー ファーストフードマニア いんちきおもちゃ大図鑑

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ハマザキカク

Author:ハマザキカク
社会評論社のサバカルチャー編集者。チュニジア、フィリピン、イギリス、日本育ち。企画、組み版、カバー、全て一人で行っている。毎日必ず最低一企画は立案している。国際関係、共産趣味、変な物のコレクション、そして珍書を柱に、常時30企画を進めている。

手掛けた作品は
『世界各国女傑列伝』
『敗戦処理首脳列伝』
『ゴム銃大図鑑』
『人種マニア』
『超高層ビビル1・2・3』
『一発朗』
『即席麺サイクロペディア』
『ダメ人間の日本史』
『ダメ人間の世界史』
『ほったいもいじるな』
『エロ語呂世界史年号』
『いんちきおもちゃ大図鑑』
『ニセドイツ1・2』
『アルバニアインターナショナル』
『大使館国際関係史』
『ゴム銃オフィシャルガイドブック』
『時刻表世界史』
『世界の首都移転』
『ファーストフードマニア』
『コーラ白書』
『世界飛び地大全』

等多数。

今までハマザキカク個人名義で書店フェアを9回開催した。ブックファースト梅田店『濱崎誉史朗フェア』、三省堂神保町本店『ハマザキカクフェア』、有隣堂ヨドバシAKIBA『Cool Ja本』『Fool Ja本』マルサン書店『Cool Ja本』ジュンク堂書店新宿店『ゴム銃大図鑑フェア』『松マルクス本舗 松田健二の下で働く濱崎誉史朗が選ぶ共産趣味本』等。

現在有隣堂ヨドバシAKIバカVol4『夏葉原 懐かしい昭和のレトロ本』開催中!!』開催中!

この『Cool Ja本』ブログ2011年度スゴブロ4位受賞!

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