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大戦末期1944年に東京に大使館を置いていた独、伊、フランス、デンマーク、ハンガリー、ルーマニア、フィンランド、ブルガリアの謎に迫る!

一部の外交マニアから絶大な支持を得ているんじゃないかと勝手に思っている『大使館国際関係史』の木下郁夫さんから、『国家間社会はスモールワールドなのか?』というタイトルの紀要を頂きました。

企画を立案しまくっていた四年ぐらい前、世界の大使館の分布状況を並べながら、諸国間の外交関係を紹介したら面白いのではないか?と思い、検索したらすぐ出てきたのが『外交・領事使節の世界分布――データの蓄積と統計分析」『紀要・地域研究・国際学編』37号(2005年)』という木下さんの紀要でした。

大使館国際関係史』はこの紀要を増幅させた、古今東西・在外公館大全の様な物ですが、一番の見所は各国の在外公館の派遣・接受表です。

そして特に私のお気に入りの表が『大東亜会議前後のアジア太平洋における外交使節の派遣・接受状況(1944年)』という第二次大戦末期の以下の表です。クリックすると更に右に大きく表示されます。

大東亜会議前後のアジア太平洋における外交使節の派遣・接受状況(1944年)

これを単なる無味乾燥なグラフと思ってはいけません。このグラフは現代の視点から見ると、不思議な外交関係が幾つも伺い知れます。このグラフとWikipediaを照らし合わせながら見ると、何時間見てても飽きません。

例えば「接受国」→「大東亜」→「日本(つまり東京)」にある「大東亜共栄圏」以外の「ヨーロッパ」の「枢軸国」の在外公館を見てみましょう。

イタリア、ドイツは日独伊三国同盟なので、日本に大使館を置いているのは当たり前ですね。デンマークはノルウェーとは対照的にナチスドイツに抵抗せず、侵攻初日にクリスチャン10世が屈服し、ドイツ配下で、細々と独立を保つ形になります。したがってドイツの同盟国の日本にも公使館を置きます。

ルーマニアも枢軸陣営なので日本に公使館を置いていました。アントネスク将軍や鉄衛団、そしてドイツ軍の援助なしで、ソ連(現ウクライナ)の主要都市であるオデッサを陥落させたのでも有名です。

フランスは言うまでもなく1939年にドイツに敗北し、ペタン元帥の傀儡政権、ヴィシー政府が成立しています。ですので枢軸陣営として日本にも大使館を置いているのは納得がいきます。結構今となっては意外な感じがしますが、日本とフランスは特に仏印で協力関係を築いています。詳しくは以下。

第二次世界大戦中の日本とフランスの協力関係を暴露した『第二次世界大戦とフランス領インドシナ』

ハンガリーはトリアノン条約に不満で、王政という政体を保ちながらホルティ提督→そして矢十字団が領土回復に必死で、ナチス側に付いたので、その流れで日本にも公使館を置いたものと見られます。

第二次大戦におけるブルガリアの立場は非常にややこしく、一言で説明するのは難しいです。マケドニアを巡ってイタリアと闘ったりもしており、実はほとんど連合国とは戦闘しておらず、枢軸国とばかりいざこざを起こしてますが、一応枢軸国陣営です。それにしても第二次バルカン戦争、第一次大戦、第二次大戦と全部負けたブルガリアは憐れですね。この国も日本に公使館を設置していたみたいです。

フィンランドはソ・フィン戦争などがあり、独立自衛の為、ナチスドイツと協力関係を結んでしまい、枢軸国寄りになってしまいます。日本はソ・フィン戦争でソ連と闘ったフィンランドに対して、強い好意を抱いていたみたいです。

……と以上のヨーロッパの国々が第二次世界大戦時は枢軸陣営という立場で、1944年の大戦末期でも日本に大使館、公使館を置いていたのです。

それだけでなく日本の傀儡政府、満州、果ては汪精衛の南京国民政府にまで大使館や公使館を設置しています。実は似たような事が逆にヨーロッパでもあり、極悪非道で悪名高いファシスト団体ウスタシャがクロアチア独立国というナチス傀儡政府を樹立した際、国際的な箔を付けるため、日本の外務省に懸命に懇願し、在ザグレブ日本公使館の設置に資金や建物まで提供したという話を、バルカン関係の本で読んだ事があります。



大使館国際関係史―在外公館の分布で読み解く世界情勢大使館国際関係史―在外公館の分布で読み解く世界情勢
(2009/04)
木下 郁夫

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この様にお互い国交を樹立し、外交関係を取り結び、大使館を設置する事によって、自陣営を盛り上げているのです。現在のベンガジ側の反政府を国家承認したフランスやイタリアと似ていますね。

という訳で、大使館の分布を見る事によって、時代ごとの陣営が一目瞭然です。第二次大戦時だけでなく、近代外交が成立し始めてから、現在に至るまでの世界のこの様な在外公館の表や分布地図が大量に載っていて、国際関係オタクにとっては垂涎物の本が『大使館国際関係史』です。


国家間社会はスモールワールドなのか?


前置きが長くなりましたが、今回の紀要で書かれている内容は、エルデシュ指数、ベーコン指数という言葉で流行っている「スモールワールド」という概念で在外公館を読み解くとどうなるのかという事です。

例えば1900年には世界には53ヵ国しか存在しなかったのですが、外交ルートで接触を取る上で一番、中継国を介さないとコンタクトを取れない国の組み合わせがモンテネグロ→南アフリカ(トランスバール)です。

まずは1900年である。帝国主義のまっただなかで、植民地や属国をのぞくと53ヵ国しかなかった。それにもかかわらず、このゲームでの最長距離はモンテネグロ→南アフリカ(トランスバール)間の4であった。バルカン半島のモンテネグロが、イスタンブールの自国公使館をつうじてオスマン帝国にメッセージを託す。トルコの大公使館は十指にあまる第三国のどれかに依頼して、それをリスボンのポルトガル政府につたえてもらう。ポルトガルはプレトリア(ツワネ)に、同地では唯一の外交使節であった代理公使を駐在させていたので南アフリカ政府にアクセスすることができた。



なるほど……、かなり興奮しますね! 何だか戦時中の日米の互いの抑留者の交換船を停留させた、中立国ポルトガルの領土だったロレンソ・マルケス(現マプート・モザンビーク)を連想させます。

あと他にも色々と面白いトリビアが載っていて、現在世界で最も在外公館を有しているのはアメリカで、日本が大使館を設置していながら、アメリカ合衆国が設置しない国はキューバ、イラン、ソロモン諸島、トンガの4ヵ国だけらしいです。

一方、自国領土に外国大使館が一切無い国がリヒテンシュタインとツバルとの事で、これも驚きですね。他にも複数の数値とデータを用いて、在外公館の分布による外交ネットワークの緻密さや逆に過疎・無縁さを解説しています。


最後にオマケですが、以下の写真が私の自宅です……というのは冗談で、在東京ウガンダ大使館です。

ウガンダ大使館

ウガンダと言えば『ラストキング・オブ・スコットランド』というアミン大統領を描いた映画が、オススメです。『大使館国際関係史』に在東京の世界中の大使館の写真を全て収録しました。これは本邦初の試みで、これも見ているだけで国力の差が反映されてあったりして面白いです。


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フォレスト・ウィテカー、ジェームズ・マカヴォイ 他

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tag : 大使館国際関係史 木下郁夫 ラストキング・オブ・スコットランド 枢軸国

プロフィール

ハマザキカク

Author:ハマザキカク
社会評論社のサバカルチャー編集者。チュニジア、フィリピン、イギリス、日本育ち。企画、組み版、カバー、全て一人で行っている。毎日必ず最低一企画は立案している。国際関係、共産趣味、変な物のコレクション、そして珍書を柱に、常時30企画を進めている。

手掛けた作品は
『世界各国女傑列伝』
『敗戦処理首脳列伝』
『ゴム銃大図鑑』
『人種マニア』
『超高層ビビル1・2・3』
『一発朗』
『即席麺サイクロペディア』
『ダメ人間の日本史』
『ダメ人間の世界史』
『ほったいもいじるな』
『エロ語呂世界史年号』
『いんちきおもちゃ大図鑑』
『ニセドイツ1・2』
『アルバニアインターナショナル』
『大使館国際関係史』
『ゴム銃オフィシャルガイドブック』
『時刻表世界史』
『世界の首都移転』
『ファーストフードマニア』
『コーラ白書』
『世界飛び地大全』

等多数。

今までハマザキカク個人名義で書店フェアを9回開催した。ブックファースト梅田店『濱崎誉史朗フェア』、三省堂神保町本店『ハマザキカクフェア』、有隣堂ヨドバシAKIBA『Cool Ja本』『Fool Ja本』マルサン書店『Cool Ja本』ジュンク堂書店新宿店『ゴム銃大図鑑フェア』『松マルクス本舗 松田健二の下で働く濱崎誉史朗が選ぶ共産趣味本』等。

現在有隣堂ヨドバシAKIバカVol4『夏葉原 懐かしい昭和のレトロ本』開催中!!』開催中!

この『Cool Ja本』ブログ2011年度スゴブロ4位受賞!

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