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世界第二のヒップホップ大国はドイツ! トンデモナイ事になってる

巷では未だに世界第二のヒップホップ大国はフランスと思われているみたいですが、2011年現在、その座はドイツに奪われました。クォリティの高さだけでなく、ラッパーの数、そしてリスナー数の差で明らかです。音楽SNS、Last.fmのタグの登録者数を見ても明白です。


deutschrap=2814人, germanhiphop=2461人, rap francais=996人, french hiphop=521人 2011年9月28日現在。フランス人は日本人並にガラパゴス化していてこうしたグローバルなウェブサービスをあまり使っていない可能性もありますが(笑)


英語に対するアンチテーゼとして最初に思い浮かぶのがフランス語、そして1990年代にMc Solaar等フランスのラッパーが割と世界的にも知られていたせいで、フランスが世界第二のヒップホップ大国と思われていたみたいです。しかし2004年を境にBushidoというチュニジア系ドイツ人ラッパーがドイツのシーンに躍り出てから、一挙にドイチャーラップが活気付きます。このBushidoが登場して以来、全ドイツシーンをギャングスタラップが席捲し、それまでのヤワなパーティーラップを一掃してしまい、ドイツ語圏外の世界からも注目を浴びる、一大ヒップホップ大国として浮上します。挙げ句の果てにギャングスタ系から更に発展し、今現在ではアメリカでもそれほど流行っているとは言えないHorror Coreなるジャンルが一大勢力になりつつあります。



規則的、変則的、偶然的―大久保進先生古稀記念論文集規則的、変則的、偶然的―大久保進先生古稀記念論文集
(2011/04)
大久保進先生古稀記念論文集編集委員会

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さて今日、久しぶりに書評として紹介するのが、大久保進先生古稀記念論文集編集委員会『規則的、変則的、偶然的』朝日出版社という論文集です。この論文集の中に伊藤壯さんによる『内なるゲットーを脱するために ドイツにおけるヒップホップ音楽の受容と展開』という極めて貴重な論文が収録されています。最初にこの論文を発見した時は度肝を抜かされました。


一度、このブログでドイツのヒップホップについて書いた事があります。


全世界のギャングスタ系ヒップホップを席捲中の「Cool Japan」


この頃はこんなマニアックというか、はっきり言ってドイツ語圏しかターゲットにしていないジャンルの音楽を聴いている人はこの日本では自分しかいないと思い込んでいたので、ドイツヒップホップの専門家がいると知って、大仰天。しかも調べてみると私が編集した『ニセドイツ』の著者、伸井太一さんの知り合いという事まで発覚。世界は狭いですね。そしてこの『規則的、変則的、偶然的』を入手する事に。



ニセドイツ〈1〉 ≒東ドイツ製工業品 (共産趣味インターナショナル VOL 2)ニセドイツ〈1〉 ≒東ドイツ製工業品 (共産趣味インターナショナル VOL 2)
(2009/10)
伸井 太一

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いや~実は私、ドイツ語が読める訳でもないので、ただ純粋に音だけで聴いていたので、この論文でドイツのヒップホップシーンについて初めて知った事が大量に載っており、読んだ時は大興奮! 


しかも驚く事に東ドイツにはラッパーSpaicheを含むZulu Boysグループが存在し、後年、ドイツ一悪名高いレーベルであるあ・の・Aggro Berlinを創設する事となったらしいです。Aggro Berlinが運営するAggro.TVはしょっちゅうチェックしており、デスメタルやフォークメタル等、他のジャンル全て合わせた中でも一番好きなレーベルだったので、その創始者が、これまた共産趣味者として取り組んだ東ドイツ出身だなんて、奇遇過ぎます。


ここに載っているドイチャーラップ、ほとんど超強烈にカッコイイので、興味有る人は毎日付けっぱなしにしましょう! 次第に中毒になりますよ。


Aggro.TV



あと興味深いのがドイツのヒップホップシーンの一大勢力なのが、トルコ系移民の事です。これは元々知っていましたが、もしいきなりギャングスタ系を聴いても何がいいのかよく分からない人は、以下のKool SavasというドイツのEminemと言われているトルコ系ラッパー聴いてみて下さい。私はBushidoより先にこのラッパーにハマりました。この人は圧倒的にテクニカル。




Kool Savasの「Wie Er」。別に代表曲っていう訳でもないし、古いけどかなりカッコイイ! 特にカッコイイのが1:21秒から! このどこの拍、小節で区切っているのかよく分からない、しかもカクカク、ハフハフした馬の様なドイツ語のフロウが強烈。


ドイツのヒップホップシーンに大革命をもたらしたBushidoについての記述もちゃんと掲載されています。察しの通り、Bushidoは日本語の「武士道」から来ています。しかもウケる事にこの人の父親はチュニジア人。実は私もチュニジア育ちなので、妙に親近感を抱いてしまいます。おまけに相当な悪人面。このBushidoの『Electro Ghetto』はドイツのアルバム・チャート6位を記録してしまい、ヒップホップとは関係のない層にまで浸透してしまいます。ドイツ在住日本人やドイツ関係者はこのラッパーの事、聞いた事あるでしょう。




私は最初、Bushidoを聴いた時は抑揚もなく、無表情だし、だみ声でただブツブツ言っているだけで、さっぱり何が良いのだか、全く分かりませんでしたが、シャッフルで再生してたまに不本意に聴いているうちに、いつの間にか毎日ヘビーロテーション中毒状態になってしまいました。この浮遊感と、デスメタルにも共通する、チューニングが高いカンカンスネアがタマラナイ。コンビを組んでいるレバノン系のSaadの野太い声も超一押し。




BushidoとSaadが組んでやったSonny Black und SaadのCarlo Cokxxx Nuttenの「Nie ein Rapper」という曲、超名曲です。カザフスタンのラッパーがカバーしているの聴いた事がある。


このBushidoを知ってから、本来、元々好きだったブルータルデスメタルに飽きて、8割方ドイツのヒップホップを毎日聴いていました。2005年頃からです。それで私個人がBushidoにハマってしまった笑える後日談があります。実はBushido隠れメタラーだったのです。しかもDimmu BorgirやNox Arcana、Dark Sanctuary等、ブラックメタル、ゴシックの曲をパクって勝手にバックトラックに使っていたのです。しまいにはそれがドイツ音楽界を揺るがす大スキャンダルに!





ドイツのあの知識人向けメディア『Spiegel(シュピーゲル)』がBushidoの盗作疑惑の手口を検証した番組です。どおりで元々メタル音楽愛好家だった自分がBushidoにハマる訳だ(笑)。


という訳でこのBushidoがドイツのヒップホップシーンにもたらした影響は尋常ではなく、この後、Bushidoフォロワーが雨後のタケノコのように大量に発生します。結果的にドイツのギャングスタラップは、メタルやゴシックの影響を受けた様な感じの陰鬱で、メランコリックで、スリリングな、マイナー調のバックトラックの曲ばかりになってしまうのです。これはメタラーからしても好都合で、ドイツではラップとメタルを両方聴いている人も多いみたいです。


またドイツは言うまでもなくテクノ大国で、KMFDMを輩出したインダストリアル大国でもあり、DarkseedとかEvereve等を産んだゴシック、ダークウェーブ大国でもあり、CubaseやLogic等を開発したDTM大国です。こうした背景から、ヒップホップの楽曲の最重要要素であるバックトラックのクォリティーの高さは目を見張るものがあり、バックトラックだけをインストゥルメンタルとしてでも十分鑑賞できるレベルです。


したがってドイツのヒップホップが秘めていたポテンシャルは、フランス等に比べて圧倒的に高く、アメリカさえも凌駕してもおかしくない程、独特のヒップホップ文化が発展する素地が敷かれていたと思えます。聴いてみて分かると思いますが、ドイツのバックトラックのシンセサイザーの旋律やドラムの音質の凝りようは半端無く、メタルやゴシック、ガバなど他のジャンルからの影響が明らかで、他国のヒップホップでは味わえない様な、絶妙なテイストに進化を遂げています。


補足:フランスのヒップホップはというとマグレブのライやラテンポップスに影響を受けた、まどろっこしいラッパーが多い気がします。少なくとも私がウォッチしている限り、SefyuやBooba、Rohff等が活躍してた2006年頃から取り立てて発展はあまりないように見えます。一度ブログで取り上げました。


アラブ移民主体のフランスのヒップホップを紹介した『フランス暴動 移民法とラップ・フランセ』



という訳で、ドイツのヒップホップが世界二位だという事を書き記しておきます。実は私はアメリカのヒップホップも色々と聴いてみてはいるのですが、未だにそれほど良いラッパーは見つけられていないので、下手するとアメリカよりドイツのヒップホップの方が上なのではないかとすら思っています。


そして後日、この論文を書かれた伊藤さんと直接お会いし、恐らく日本で二人しか存在しないドイチャーラップ談義に花を咲かせたのでした。しかも伊藤さんは、元々デスメタルやグラインドコアを聴いていたらしく、まさに私と同じ様な変遷を辿ってドイツのヒップホップに行き着いていました。これでドイチャーラップがメタラーの琴線に触れる事が立証されました。私一人の突然変異的な嗜好ではなく、もう一人いたので、ある程度客観的です(笑)。更にはアドルノの美学を専門に研究されており、大学で『否定弁証法』などを少しかじった自分としては、何でこんなに関心分野が似ている人がこの国に存在するのか、不思議でならない状態でした。



否定弁証法否定弁証法
(1996/06)
テオドール・W. アドルノ

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とにかく何らかの形でドイチャーラップを広めたい、流行らせたいです! いや、やっぱあんまり流行っても困るけど……。あと個人的には今ではもうドイツのヒップホップもかなり聞き尽くしてしまい、デスメタルと同様、常に新曲がアップされるのを待ち構えているという状況なので、その間に新たにロシアのヒップホップを物色、開拓中です。しかしキリル文字なので情報収集がしにくく、大変な思いをしています。世界のヒップホップを理解している人、興味がある人、是非ご連絡下さい。でも現時点で日本語のネットで世界のヒップホップ情報を発信している人、自分しか見あたらないので、その第一人者になろうかなー? そしていつかロフトとかのイベント会場で、世界のホップホップを流すイベントを開催できれば面白いなと思います。


以下、他にお気に入りのドイツヒップホップのビデオクリップです。





Kaisaschnitt - So krank kann der Typ nicht sein。2009年、全ジャンル総合で一番ヘビロテだった曲。ドイツなのにタイっぽい怪しい旋律が良い。





Ribellu Maure - Wie ein Engel - Yavido Hotlist Platz 2。Carlo Cokxxx Nuttenのエッセンスを更に抽出した様な感じ。




Massaka feat. Killa Hakan - Das Kartell! Horror Coreと言われるヒップホップの中でもデスメタルの様に凶悪さを更に露骨に極端にしたジャンルの中で一番インパクトがあるMassaka。途中でトルコのカリスマ、Killa Hakanが登場!




AUTOMATIKK FEAT MASSIV, MANUELLSEN, CELO&ABDI, JURI, コワモテ集団。Massivが「フクシマ・エフェクト」って言ってる気がするんだけど……。




NAZAR & RAF CAMORA - KILLABIZZZ。よく分かりませんが蜂をコンセプトにしている。この二人は若手のホープか。割と分かりやすいメロディ。




Haftbefehl - Thug Life - Meine Stadt "Frankfurt" - Psst (PART 18) HQ。ドイツ一人相が悪いラッパーHaftbefehl。




Kollegah - Mondfinsternis (prod. by Sunset Mafia - Jay Ho)。早口がお家芸のKollegah。ドイツには珍しく、移民ではなく白人。




Automatikk "1000 Jungs" Official Video HD。恐らくドイツ一の武闘派Automatikk。怖そう!K1選手か!?




Baba Saad - Halunke Snippet。もしかしたらBushidoよりも好きかもしれないBaba Saadの新譜のメドレー。若干、前アルバム『Saadcore』の方がいい気がする。切ないメランコリックなSaad節炸裂。




BEIRUT FEAT. MASSIV - NACKENKLATSCHER (OFFICIAL HD VERSION)。もの凄い怒りを感じる。このラッパーは期待できそう。




MASSIV - SCHLIESS DEINE AUGEN UND VERGISS (PROD. BY ABAZ) (OFFICIAL HD VERSION)。以前はドイツでも有数の怖そうな人だったのだが、新曲で丸くなった。最近のBushidoと似ててややオトナしすぎ。




Dj Sweap & DJPfund 500 feat. Fler & MoTrip "Die Welt dreht sich"。Flerは中堅ラッパーとして地味に活躍。伊藤さんの論文で初めてポーランド系と知りました。昔の方がよりハードコアで格好良かったかなー。


あとは他にもお薦めしたいビデオクリップいっぱいあるのですが、私のTwilogの方を見てみて下さい。

http://twilog.org/hamazakikaku/hashtags-jpwh


http://twilog.org/hamazakikaku/hashtags-%E8%BE%BA%E5%A2%83%E3%83%92%E3%83%83%E3%83%97%E3%83%9B%E3%83%83%E3%83%97


http://twilog.org/hamazakikaku/hashtags-%E4%B8%96%E7%95%8C%E3%81%AE%E3%83%92%E3%83%83%E3%83%97%E3%83%9B%E3%83%83%E3%83%97
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テーマ : 本に関すること
ジャンル : 本・雑誌

tag : ドイツ ヒップホップ ドイチャーラップ Bushido

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ハマザキカク

Author:ハマザキカク
社会評論社のサバカルチャー編集者。チュニジア、フィリピン、イギリス、日本育ち。企画、組み版、カバー、全て一人で行っている。毎日必ず最低一企画は立案している。国際関係、共産趣味、変な物のコレクション、そして珍書を柱に、常時30企画を進めている。

手掛けた作品は
『世界各国女傑列伝』
『敗戦処理首脳列伝』
『ゴム銃大図鑑』
『人種マニア』
『超高層ビビル1・2・3』
『一発朗』
『即席麺サイクロペディア』
『ダメ人間の日本史』
『ダメ人間の世界史』
『ほったいもいじるな』
『エロ語呂世界史年号』
『いんちきおもちゃ大図鑑』
『ニセドイツ1・2』
『アルバニアインターナショナル』
『大使館国際関係史』
『ゴム銃オフィシャルガイドブック』
『時刻表世界史』
『世界の首都移転』
『ファーストフードマニア』
『コーラ白書』
『世界飛び地大全』

等多数。

今までハマザキカク個人名義で書店フェアを9回開催した。ブックファースト梅田店『濱崎誉史朗フェア』、三省堂神保町本店『ハマザキカクフェア』、有隣堂ヨドバシAKIBA『Cool Ja本』『Fool Ja本』マルサン書店『Cool Ja本』ジュンク堂書店新宿店『ゴム銃大図鑑フェア』『松マルクス本舗 松田健二の下で働く濱崎誉史朗が選ぶ共産趣味本』等。

現在有隣堂ヨドバシAKIバカVol4『夏葉原 懐かしい昭和のレトロ本』開催中!!』開催中!

この『Cool Ja本』ブログ2011年度スゴブロ4位受賞!

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